寂寞河中府 寂寞たり河中府
生民屢有災 生民に屢(しばしば)災ひ有り
避兵開邃穴 兵を避くるに邃穴(すいけつ)を開け
防水築高臺 水を防ぐに高台を築く
六月常無雨 六月 常に雨無く
三冬卻有雷 三冬 却って雷有り
偶思禪伯語 偶(たま)さかに思(おぼ)す 禅を伯が語ると
不覺笑顏開 覚わず顔に笑み開く
【私訳】
往時の繁栄の陰もなく サマルカンドは静まり返っている
民草はしばしば災難に遭う
兵難を避けるために深い壕を開けたり
水難を防ぐために高台を築く
一年の内の半分は雨が降らず
そのくせ冬季には 暴風雨にみまわれる
長たちが天を祭るようすが 思いがけず天子がなさる封禅に見えた
それをながめているうち いつの間にか私は微笑んでいた
・「偶思禪伯語 不覺笑顏開」については非常に悩みました。私は「異民族の長が執り行う祭りの様子が中原で天子がする封禅にだぶって見え、人の業は辺境でも中央でも変わりないのだと感動し、いつの間にか優しく微笑んでいた」という意味であると捉え、そんな解釈をしてみました。
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