寂寞河中府 寂寞たり河中府
遐荒僻一隅 遐荒(かこう)の一隅に僻す
蒲萄垂馬乳 葡萄は馬乳に垂れ
杷欖燦牛酥 杷欖は牛酥に燦く
釀酒無輸課 酒を釀すも課を輸す無く
耕田不納租 田を耕すも租を納めず
西行萬餘里 西に行くこと萬余里
誰謂乃良圖 誰か謂はん 乃ち良図あるを
【私訳】
往時の繁栄の陰もなく サマルカンドは静まり返っている
荒涼とした辺境の そのまた片隅の辺鄙なところ
たわわに生った葡萄はまるで馬の乳房のように豊かに垂れ下がり
杷欖の実の膚は鮮やかなミルク色に輝いている
酒をいくら醸しても税金を課されることもなく
田をいくら耕しても租税を納める必要もない
中原から西に行くこと万余里のこの地に
こんな素晴らしい土地があることを 今まで誰一人知らなかったとは
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