北上太行山 北のかた太行山に上れば
艱哉何巍巍 艱(かた)き哉 何ぞ巍々たる
羊腸坂詰屈 羊腸の坂 詰屈し
車輪爲之摧 車輪 之がために摧く
樹木何蕭瑟 樹木 何ぞ蕭瑟たる
北風聲正悲 北風 聲(こえ) 正に悲し
熊羆對我蹲 熊羆 我に対して蹲(うずく)まり
虎豹夾路啼 虎豹 路を夾(はさ)んで啼く
谿谷少人民 谿谷 人民少なく
雪落何霏霏 雪落つること 何ぞ霏々たる
延頸長歎息 頸を延ばして長歎息し
遠行多所懷 遠行して 懷う所多し
【私訳】
北方の太行山に上れば
道は険しく山は高々とそびえている
羊腸の坂は曲がりくねり
車輪はそのために砕けそうになる
樹木はさびしげで
風の音はひどくうら悲しい
熊やヒグマは私に向かってうずくまり
虎や豹は道の両側から吠えかかる
渓谷には人の姿も少なく
雪はしんしんと降りしきる
首を伸ばして長いため息をつく
はるばる遠征してきたことを思うと
愁いはいよいよ増すのだ
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