三鳥別王母 三鳥 王母に別れ
銜書來見過 書を銜(ふく)んで来たりて過ぎらる
腸斷若剪弦 腸の断つこと絃を剪るが若し
其如愁思何 其れ愁思を如何にせん
遙知玉窗裏 遥かに知る玉窓の裏
纖手弄雲和 繊手 雲和を弄するを
奏曲有深意 曲を奏して深意有り
青松交女蘿 青松 女蘿(じょら)を交ふ
寫水山井中 水を写(そそ)ぐ山井の中
同泉豈殊波 泉を同じくせば豈に波を殊にせん
秦心與楚恨 秦心と楚恨を
皎皎爲誰多 皎々たり誰(いづ)れか多きと為さんかは
【私訳】
西王母の治める仙界からの使いである三青鳥
遠い地にある私に手紙を届けてくださった旅人がそんなふうに見えた
その手紙を読めば 私の心は琴の弦が裁たれるような切ない音を立てて痛む
この愁いをいったいどうしたらよいのだろう
遥か遠くのきみ きっときみは窓辺に寄り添い
あの美しい細い手で小さな琴をひいている
曲にのって奏でられるきみの心は
まるで青々とした松に女蘿が絡み伝うように
私に優しく寄り添ってくる
水を山の井戸の中に注げば 湧きだす泉の水と一緒になって同じ波を立てるように
私の想いも きみと同じ
秦にいる私のきもち 楚にいるきみのねがい
どちらの想いが強いかなんて分かり切っている
きみと私 同じだよ
(女蘿=じょら。ヒカゲノカズラ、サルオカゼ。松に寄り添うように生えるため、詩経などで、男性に寄り添おうとする女心に喩えられるそうです。)
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