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蜃景茶館

気ままに書いていきたいと思います。

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李白:寄遠 其四


玉筯落春鏡  玉筯(ぎょくちょ) 春鏡(しゅんきょう)に落ち
坐愁湖陽水  坐(はなは)だ愁う湖陽の水
聞與陰麗華  聞与す陰麗華
風烟接鄰里  風烟 鄰里に接すと
青春已復過  青春 已に復た過ぐ
白日忽相催  白日 忽(たちま)ち相催(あいうなが)す
但恐荷花晚  但だ恐る荷花(かか)の晚(く)るるを
令人意已摧  人をして意已に摧(くだ)けしむ
相思不惜夢  相思 夢を惜まず
日夜向陽臺  日夜 陽台に向はん


【私訳】

玉の箸のようなとめどない私の涙
春の澄んだ川面に落ちた
堪えがたい哀しみが湖陽の水にも広がっていく

聞けば光武帝の妻 陰皇后の故郷である新野は
ここ湖陽とは同じ風と雲が吹く隣りどうし

春はすでにまた過ぎてしまった
月日も互いを急かすようにまたたくまに過ぎ去ってしまう
こわいのは蓮の花がいつしか衰えてゆくこと
私たちの思いを弱らせていってしまうこと

あなたを想ってたくさん夢をみよう
陽台で出逢う 楚王と巫山の神女のように


(陽台=生き別れとなった楚王と神女が唯一逢える場所。巫山雲雨より。夢の中でなら愛しい方と毎日お逢いできます。)


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李白:寄遠 其三


本作一行書  本(も)と一行の書を作り
殷勤道相憶  殷勤 相憶うを道(い)う
一行復一行  一行 復た一行
滿紙情何極  紙に満つるも情何んぞ極まらん
瑤臺有黃鶴  瑤台 黄鶴有り
爲報青樓人  為に青楼の人に報ぜよ
朱顏凋落盡  朱顔 凋落し尽し
白髮一何新  白髮 一(いつ)に何んぞ新たなる
自知未應還  自ら知る未だ応に還るべらかざるを
離居經三春  離居 三春を経たり
桃李今若爲  桃李 今 若為(いかん)
當窗發光彩  窓に当たって光彩を発せん
莫使香風飄  香風をして飄らしむ莫かれ
留與紅芳待  紅芳を留与して待て


【私訳】

もとは短い手紙を書くつもりだった
心をこめて「きみを想っているよ」と伝えるだけの

一行 また 一行

溢れるくらい書き綴ってもいつまでも言い足りない

仙界から使いするという黄鶴よ
私のためにあの青楼にすむ彼女に伝えてくれ

幸せに微笑んでいた私の顔もやつれはて
ずいぶんと白髪が増えてきてしまった
当分帰れはしないことを自分でも良くわかってる
きみと離れてもう三回目の春
庭の桃李はどうなってるだろう
きっと窓から美しく輝いている様子が見えるんだろうね

春風にその香りを吹き飛ばされないよう
色鮮やかなその紅の花の芳香をどうか留めたままで
待っていてくれないか


(香風、紅芳=花の香りを含んだ風。赤い花。女性の美貌を暗喩しています。上に「朱顏凋落盡」ともあることから、私は「どうか愁いに沈んだままでいずに、笑顔で暮らしながら待っていて欲しい」という解釈もしています。)

李白:寄遠 其二


青樓何所在  青楼 何れの所にか在る
乃在碧雲中  乃ち在り 碧雲の中
寶鏡挂秋水  宝鏡 秋水を挂けるがごとく
羅衣輕春風  羅衣 春風に軽し
新妝坐落日  新妝 落日に坐し
悵望金屏空  悵望すれば金屏 空し
念此送短書  此を念(おも)って短書を送らんとす
願因雙飛鴻  願はくば双飛鴻に因らん


【私訳】

あのひとがいる青楼はどこだろう
それはあの青空の雲の中

部屋には秋の澄み切った水のような宝鏡が掛っていて
彼女のうすぎぬは軽やかに春風に吹かれて舞う
化粧をし直したあとに夕日の中に座り
哀しげに金のついたてを見つめている

そんなふうに思えたから手紙を送ろう
できたなら 翼を並べ睦まじく飛ぶ二羽の大雁に託して

李白:寄遠 其一


三鳥別王母  三鳥 王母に別れ
銜書來見過  書を銜(ふく)んで来たりて過ぎらる
腸斷若剪弦  腸の断つこと絃を剪るが若し
其如愁思何  其れ愁思を如何にせん
遙知玉窗裏  遥かに知る玉窓の裏
纖手弄雲和  繊手 雲和を弄するを
奏曲有深意  曲を奏して深意有り
青松交女蘿  青松 女蘿(じょら)を交ふ
寫水山井中  水を写(そそ)ぐ山井の中
同泉豈殊波  泉を同じくせば豈に波を殊にせん
秦心與楚恨  秦心と楚恨を
皎皎爲誰多  皎々たり誰(いづ)れか多きと為さんかは


【私訳】

西王母の治める仙界からの使いである三青鳥
遠い地にある私に手紙を届けてくださった旅人がそんなふうに見えた

その手紙を読めば 私の心は琴の弦が裁たれるような切ない音を立てて痛む

この愁いをいったいどうしたらよいのだろう

遥か遠くのきみ きっときみは窓辺に寄り添い
あの美しい細い手で小さな琴をひいている
曲にのって奏でられるきみの心は
まるで青々とした松に女蘿が絡み伝うように
私に優しく寄り添ってくる

水を山の井戸の中に注げば 湧きだす泉の水と一緒になって同じ波を立てるように
私の想いも きみと同じ

秦にいる私のきもち 楚にいるきみのねがい
どちらの想いが強いかなんて分かり切っている
きみと私 同じだよ


(女蘿=じょら。ヒカゲノカズラ、サルオカゼ。松に寄り添うように生えるため、詩経などで、男性に寄り添おうとする女心に喩えられるそうです。)

プロフィール

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Yán YánLǐ
性別:
非公開

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